経営改善では「赤字だから経費を削る」という発想だけでは十分ではありません。今回ご紹介するのは、築50年以上の高齢者施設を運営する社会福祉法人で、老朽化への対応と資金繰り悪化が同時に進んでいた事例です。財務分析だけでなく、建替え後の事業形態、定員規模、介護ニーズ、人員体制、補助金、借入返済まで一体で検討しました。
企業情報
業種 :社会福祉法人・高齢者福祉施設(従業員数:20~30名)
主な課題:施設老朽化/利用率低下/人件費率上昇/赤字・資金繰り/建替え資金
支援内容:決算分析、資金繰り予測、複数事業モデルの収支試算、行政協議資料、金融機関相談資料・返済計画
課題1 施設は老朽化、収支も悪化。「建替えるか」だけでは決められない
対象施設は築50年以上が経過し、設備故障や修繕が相次いでいました。一方、直近では利用率が7割台まで低下し、人件費率も7割台まで上昇。サービス活動収支も大きなマイナスとなっていました。
ただし、分析すると経費全体が異常に高いわけではなく、主な問題は「利用率の低下」と「人件費負担の重さ」にあることが見えてきました。ここを切り分けず、単純な経費削減だけを行っても根本改善にはつながりません。
課題2 PLだけでなく「何か月資金が持つか」を計算
さらに重要だったのが資金繰りです。決算上の赤字だけでなく、本業の資金収支、既存の返済、今後必要となる設備更新などを加味してキャッシュフローを再計算しました。
借入などの追加資金調達を行わない前提では、法人全体の手元資金を回しても数か月程度で資金が不足する可能性があるという厳しい結果になりました。積立資産の取崩しを行えば時間は延ばせますが、それだけでは構造的な赤字は解消しません。
このように「利益がいくらか」だけでなく、「現金がいつまで持つのか」を経営者・理事会と共有することが、経営改善のスタートになります。
課題3 建替え後の姿を一つに決めず、複数シナリオで比較
この事例企業では、現状の事業形態を続けるケース、別の高齢者施設類型へ転換するケース、介護サービスを施設内で提供できる形へ移行するケースなど、複数案を比較しました。
さらに、定員規模と入居者の平均介護度を変えながら収益・人件費・経費を試算。「定員を増やせば必ず良い」「介護報酬が入れば黒字になる」といった単純な判断ではなく、必要な職員数と人件費、稼働率、介護度、借入返済を含めて持続可能性を検証しています。
· 定員規模を変えた場合の収支
· 平均介護度が変わった場合の介護報酬・人件費
· 現在の利用者構成を維持した場合と将来的に変化した場合
· 建替え後の借入返済まで含めた中長期キャッシュフロー
行政・金融機関との協議も「数字を作ってから」進める
建替えは法人だけでは完結しません。補助制度や自治体の介護保険事業計画との整合、施設類型の変更、金融機関からの借入など、複数の関係者との調整が必要です。
そこで、自治体へ説明する建替え方針・要望資料を整理するとともに、金融機関向けには事業シミュレーションと複数年の返済計画を作成しました。「建物が古いのでお金を貸してほしい」ではなく、建替え後にどのような事業を行い、どの程度の収支を確保し、どう返済していくのかを数字で示すことが重要です。
この事例から分かること
経営改善・資金繰り支援では、赤字の原因分析だけでなく、「今の現金が何か月持つか」「将来どの事業モデルなら返済できるか」まで数字で見える化することが重要です。
株式会社ゆびすいコンサルティングでは、制度や計画を作るだけでなく、現状分析、設計、社内説明、運用、会議・モニタリングまで、企業の状況に合わせて伴走支援しています。お困りのことがありましたら、是非お気軽にお問い合わせフォームまたはお電話(TEL:072-221-2791)よりご相談ください。
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